カメラマンをしています。

ふかふかの夜に。

本業はフリーランスのフォトグラファー。ここを日記のように使っています。誰かに見せたいものじゃなくて、自分が忘れたくない気持ちを置いとくところ。たまに写真や仕事のこと。

ここにいる、という気持ち

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6月5日、金曜日。

朝、出勤してからスタジオの掃除を始めた。

昨日の撮影でつかった家具や機材の

配置を元に戻し、テーブルや椅子を拭いて

掃除機をかけた。

家の床はルンバにお任せしてるけど、

スタジオのそれはコンクリートだから、

本体も音も大きな、業務用の掃除機を使ってる。

スケジュールに急ぐ必要がなかったから

丁寧にかけた。しみじみと、幸せを感じる時間。


ことしばらく前から緊張してた撮影が

ちゃんとしたようすで終わって、翌日の朝、

胸をなでおろしながら掃除してる時、

ぶじに終わってほんとうによかったな、

喜んでもらえたかな、

あの写真は私もすごく気に入ったな、

なんて考えながら居場所を整えていると、

自分がちゃんとここに居ていいような気がして

次もがんばろう、と思える。

自分がちゃんとここに居ていいような感覚、

私はそれをいつもとても必要としてる。


今日の掃除のように、こまごまと

何かに一人で没頭してる時は、

ミヒャエルエンデの「モモ」に出てくる

道路掃除婦のベッポじいさんの言葉を思い出す。

..

「なあ、モモ」と、

ベッポはたとえばこんなふうにはじめます。

「とっても長い道路をうけもつことがあるんだ。

おそろしくて、これじゃとてもやりきれない。

こう思ってしまう。」

「そこで、せかせかと働きだす。

どんどんスピードを上げていく。

ときどき目をあげて見るんだが、

いつ見てものこりの道路はちーとも

へっていない。

だからもっとすごいいきおいで働きまくる。

心配でたまらないんだ。そしてしまいには

息がきれて動けなくなってしまう。

道路はまだ残っているのにな。

こういうやり方はいかんのだ。」

「一度に道路ぜんぶのことを考えてはいかん。

わかるかな?つぎの一歩のことだけ、

つぎのひと呼吸のことだけ、

つぎのひと掃きのことだけを考えるんだ。

いつもただつぎのことだけをな。」

「するとたのしくなってくる。

これがだいじなんだ。

たのしければ仕事がうまくはかどる。

こういうふうにやらなきゃあだめなんだ。」

「ひょっと気がついた時には、

一歩一歩すすんできた道路がぜんぶおわっとる。

どうやってやりとげたかはじぶんでもわからんし

息もきれてない。」


「これがだいじなんだ。」

...

小学生の頃、なんということか、

私は色んなことを踏ん張ろうとしすぎてしまい

拒食症で入院してた時期があったんだけど、

当時の担任の先生が「モモ」を持ってきてくれて

何度も何度もよみかえした。

大人になってもおりにふれて読み返し、

いちばん大切な本のひとつになった。


ベッポじいさんの言ってたようにしか、

先へはすすんでいけないって、今ならわかる。


午後からは、とても楽しみな撮影が控えてる。

終わりは少し遅くなりそうだけど

今日もつぎのひと呼吸のことを考えて、

静かでまんまるな気持ちで過ごせますように◯